第73話   釣り場の危険性   平成16年01月05日  

魚釣には常に危険性が伴う。特に11月からの季節風が吹く時期が危険だ。風速10mからの風とそして濡れた岩には岩海苔が付着して滑り易くなって来る。

釣り人が多くなればなるほどに、釣れる場所は常に満員状態となり、危険を伴う場所でもついつい釣ってしまうと云う事がある。危険を敢えて冒してまでも・・・・とは思うのだが、結構そんな人が大勢居る。

特に最近は、師匠、弟子の関係が崩れ岩場の危険性の予備知識を持たぬ若者やにわか釣師が増えていると同時に釣のエチケットやマナーが以前にもまして低下している。

庄内での昔の釣では万一の事があれば家名断絶、家禄の没収等があったから釣りを禁じた家もあった位であったから、釣は慎重にも慎重をきしての釣となっていた。釣りを許した家でも始め老練な釣師に頼み込んで釣行してもらい釣技の指導と共に危険な岩場とかエチケット、マナーを教えて貰うのが当たり前であった。それでも事故はあった。

その内容とは土屋鴎涯の「戯画 磯釣り」にも出ているので紹介しよう。
1. 濡れている岩では決して釣らぬ事。
2. 釣場では笠を被らぬ事。
3. 笠、ござ、はけご(魚カゴ)、弁当類は波打ち際から遠ざかった岩の窪みなどにまとめておく事。
4. 海に流された人が居ても決して手を伸べてはいけない。綱か帯を投げ与えて足場を見て構える事。
5. 腰にはけご、弁当類をつけて釣りをしてはならない。
6. 蝦夷の丸岩、地獄のひび危険の事・・・・云々。

最近は多少濡れている岩に上がって釣りをして居る者が少なからずいる。これは非常に危険だ。30分、1時間、3時間に一回の大波が来る事がある。これからの釣では寒クロ釣と称して厳冬期に狙う黒鯛釣りがあるが、その危険性が益々跳ね上がる。

長年岩を熟知している釣師ならともかくとして海底の地形も知らない日曜釣師では危険極まりない釣りをしている事になる。長年釣りをしている人でさえ波に浚われて、流されたと云うことを聞いたこともある。

「釣は命あっての釣で危険性のない釣はないと思うべし」。楽しい釣が一瞬で悲惨な釣にならぬように心がけて釣りを楽しんでもらいたいものだ。